図版024と025仔牛を担ぐ人物-モスコポロス Moschophoros の像 | next-図版 025 |
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○ イミトス山産出の大理石で出来ていて、この像の高さは 1.65 m.( 5 ft. 6 inch )である。頭と手足のない胴体のトルソ像が 1864 年にアテネのアクロポリスの丘の上で出土し、ポロス石(多孔性石灰石)で出来た台石は 1887 年に出土した。この台石には 彫像の右足のくっ付いている台座があった。アテネのアクロポリス美術館に収蔵されている。収蔵品 No. 624。
○ 矩形の台座の上に付いた彫り込みから この彫像は ロムボス (Rh)ombos か ボムボス (B)ombos か コムボス (K)ombos という名の人物(名前の最初の部分が 亡くなっている。)の奉献したものであることが 判っている。自らの肖像を女神に奉献したこの人物は、アッテイカ地方の高位にあった 富裕な市民であったことは、疑いを容れない。生け贄(いけにえ)の供え物にする小さい仔牛を肩に担いで アテ-ナ女神の方に近付いている。薄くて凹凸のない外套が その身体の輪郭の線にぴったり沿って 両肩から垂れ下がり、殆ど両膝の所まで達している。この外套は 前開きになっている。珊瑚か真珠のような形をした巻き毛が 額の周りを縁取り、両耳の後ろから 3 本の弁髪になって 両肩越しに胸に垂れ下がって来ている。頭髪は細いリボンで縛られていて、頭のてっぺんは 着色に便利なように、表面を磨かないままで 粗く残してある。顎髯は 顔の周りを縁取って剃り込まれており、上下の唇の周りでカ-ブしていて はっきりと目立っている。深く窪んだ大きい両眼は、眼差しがより生き生きするように 嘗ては色石が嵌め込まれていたが、今は亡くなってしまった。
○ この男は、両腕を上に挙げて 両肩越しに担いだ仔牛の両足を掴んでいるが、その動作の作り出しているパタ-ンが 男と牛 寄進者とその供え物とを密着させて 一体にしている。両蹄(ひづめ)を握っている両手が それに相応しい中央飾りの装飾となっている。
○ その形態がはっきりしていて 簡明であることから見ても、このグル-プ彫刻像は B.C.6 世紀初期に見られる典型的な構成を持っており、珍しく愛嬌のある纏まりを持つに到っている。アッテイカ地方の彫刻家が B.C. 570 年頃にこれを彫ったものであるが、今日までの所 この工匠の作った作品は、他には何一つとして残されて来てはいない。
○ 仔牛の皮膚の上には、青い色の着色の痕跡が残っている。