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アクロポリスの丘の歴史
 
 
 
 

○ テルモピュライの戦いが終わった後に、ペルシャ軍は ボエオテイア地方 Boeotia(訳注 270)を征服し、更にアテネに向けて 進軍した。エウボイア島 Euboaea(訳注 271)のアルテミシオン岬 Artemisium(訳注 272)沖での海戦の後、ペルシャ艦隊は陸上軍と並んで航行し フアレロン湾に到達した。当時のアテネの指導者は テミストクレス Themistocles(訳注 273)であったが、彼はずっと以前に 大艦隊を編成して持つよう アテネの人々を説き伏せており、ペルシャ軍から勝利を獲ち得る道は 海戦しかないという信念を持っていた。自分では同輩市民を納得させることが出来なかったので、テミストクレスは神の成せる業のしるしと神の予言とを使って アテネの人々に影響を及ぼそうと企てたと プルタ−ク Plutarch(訳注 274)は 自著のテミストクレス伝の中で述べている。その例を挙げれば、ヘロドトスの述べているように エレクトニウスを表象するものとしての奇怪な大蛇が エレクテウム神殿に棲み付いていて アクロポリスの丘の見張り番をして呉れていると アテネの人々は信じていて、毎月この大蛇には 蜂蜜ケ−キの貢ぎ物が献げられ、このケ−キは何時も喰べられていた。併し今回だけは 触れられないままで 残されているのが見付かり、これは女神がアクロポリスの丘を見棄てて アテネの人々を海に導いて行くことを示していると 女神官が宣言した。アテネの人々が難を逃れて その後ろに逃げ込むという段取りになっている <木で出来た壁>というデルフイの神託は、木製の船の意味であって アクロポリスの丘の周りを取り巻いている 木で出来た壁面を意味するのではないと、テミストクレスは解釈した。救済することについて 唯一つ希望を提供出来るものは、船だけであるとしたのであって、こうしたやり方で テミストクレスは アテネの人々に確信を抱かせることが出来た。

○ ペルシャ軍のアクロポリスの丘の占拠とアテネの町の明け渡し

○ 彼らはアテネを去り、老人と婦人と子供たちとは 無事 サラミス島とトロイゼンとに連れて行かれたが、能力を持った男たちはすべて アテ−ナ女神の神々しい彫像と一緒に船に乗って、ペルシャ艦隊との大戦争に備えて 準備をした。ペルシャ軍がアテネに到着した時、この都市には 誰一人として残って居ないことが判った。彼らはアクロポリスの丘を手に入れようと試みたが、この時は 抵抗に出会った。老人とか 内陣の番人幾人かとかの他に 可成りの数の下層階級の人々が この丘に避難して来ていて、自分なりのやり方で神託を解釈して 戸の扉や 窓のシャッタ−や 材木の厚板を使って、アクロポリスの丘への入り口を塞いだ。こうすることで 自分たちが禍を受けないようにすることが出来ると考えたのであった。

○ ペルシャ軍は アレオパゴスの丘に陣取って 攻囲し始めた。麻屑で火矢を作り これに火を付けて 木製の壁面めがけて投げ上げたために、木で出来た壁面はとうとう焼け落ちてしまったけれども、攻囲された人々は抵抗を続けて 未だ持ちこたえていた。大きい石を スロ−プ沿いに転がして落とし、明け渡しを求めたあらゆる要求を拒絶し、この攻囲攻撃が 数日間続いた。併しながら 見張り番がいなかったアクロポリスの丘の 北側の斜面を登攀して来たペルシャの軍隊が 防禦軍の眼の前に突如姿を現わした時、彼らは飛び上がって驚き 恐怖にひどくすくんでしまって、或る者は絶壁越しに下に跳び降りて 死に到り、他の者は神殿の中に駆け込んで 救いを求めた。ペルシャ軍は 神殿の扉をこじ開けて 哀願する者を引きずり出して殺し、その後略奪を加えた上 神殿をどれもこれも破壊して、炬火ですべてのものを灰燼に帰させた。破壊作業が終わった後 クセルクセス王は 追放されていたギリシャ人を呼び寄せて 自分の随員に加え、アクロポリスの丘に昇って 彼らの女神に犠牲を捧げるよう命じたと ヘロドトスが伝えている。王の命に従って 聖なる神域に入り、神聖なオリ−ブの木の焼けた切り株から  1 m.もの長さに芽をふいて 新しい若枝が生え出しているのを目にした時、彼らの驚きは如何許りであったかと ヘロドトスが述べている。

○ サラミスの海戦( B.C. 490 年 9 月)とプラタエアの戦闘( B.C. 479 年 8 月)
○ ギリシャ軍がペルシャ軍に対抗して戦った あらゆる戦闘の中で、サラミスでのこの海戦は ペルシャの脅迫からたった一度だけ ギリシャを自由にしたものであって、アテネにデモクラシ−をしっかりと確立し 総べてのギリシャ人 特にアテネの人々に相応しい 名声を博した戦闘であった。この成功は 何よりも先ず第一に、テミストクレスが展開した 戦略的なプランの賜物であるに違いない。

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