図 09) エレクテウム神殿の復元平面図
トラヴロス J. Travlos のスケッチ |
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○ アテ−ナ・ポリアス女神の神殿
1) プロステユレ・タイプの神殿
○ エレクテウム神殿の東面は 正しく小さいプロステユレの神殿であり、同時に又この複雑な建造物の一部でもあった。その円柱は大そう上品であって、ドリア式の円柱のように 圧迫感を感じさせることはない。
壁面の方と中央部の上に向かって 僅かに傾斜して立っている。一番北端にあった 1 本は その上部のエピステユレ(台輪) 及び隣りの壁柱の上部にあった飾りもろとも、エルギン卿がロンドンに持ち去ってしまって 今は大英博物館に展示されている。
○ 段が 3 つ付いたクレピドマが東正面から南側面全体まで 残らずぐるっと回って走っており、その最上段のステユロベイト(基台床)の上に円柱が立っているが、この神殿ではステユロベイトに パルテノン神殿に見られるような凸状隆起は見られない。しなやかなイオニア式柱頭の上には 3 本の平行の帯状に分かれたエピステユレがあり、その上はフリ−ズ(小壁)であった。フリ−ズはこの建造物の周りをぐるっと取り巻いていて、コルニス(軒蛇腹)で保護されていた。破風には彫刻像が付いていたとは思えない。
○ 東正面の円柱の背面には 嘗ては壁柱を横に繋いだ壁面があったが、今は残っていない。幅が 2.70 m.の入り口が この壁の中央に付いていて、奥行きの浅いこのイオニア式のプロナオスから ケラに入るようになっていた。プロピュライア入口門の画廊と同じように この入り口扉の左右には 2.70 x 0.75 m.の細長い窓が 1 つづつ付いていた。
2) ケラ(神像安置所)
○ 当時は 東側のプロナオスに付いたこの扉を通って ケラの中に入っていた。ケラの奥行きの長さは 7.32 m.で、その奥には このケラとは全く何の関連も持っていない この神殿の西側の部分との間を仕切る 間仕切り壁があった。ケラの床は 東正面のステユロベイトと同じ高さで、その内部には円柱が立っており 3 つのネイブ(身廊)に分けられていたらしい。床の下は 入り口のない地下室で、神話に現われ出る蛇のための 暗い土穴であった。後年になって この神殿が北面を入り口としたキリスト教の教会であった頃には 内部のケラの形が ネイブを 3 つ持ったものであったことが、今残っている下部から知ることが出来る。
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