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アクロポリスの丘の上の記念建造物
 
 
 
 

○ ケラのこの室は 市の守護者女神であるアテ−ナ・ポリアス女神の礼拝用に奉献されたものであり、女神の礼拝像が そこに安置されていた。この像は オリ−ブの木で作られた聖像であって 女神が腰掛けており、偶像とか初期のクソアノン像とかであって 手には金の壺を持ち、パンアテナイア祭の祭典で運び上げた金で織ったヴェ−ルを <アレポロス>の娘たちが着せ掛けたのであった。多くの献納物が奉献され、マルドニウスの剣をはじめとするペルシャ軍の戦利品も 数多く飾られていた。<クソアノンの像>の前では 彫刻家カリマコス Callimachos(訳註 454)の作った黄金のランプが 昼夜を問わず一日中燃え続け、一ぱいに給油されるのは 一年にたった一度だけに過ぎないけれども、灯芯が燃え尽きることがなかったと パウサニアスが伝えている。このランプ越しに ブロンズで出来た非常に丈の高いパ−ム(棕櫚)の木が 木製の天井と同じ高さの所まで届いていて、油煙を外に排出していた。

○ イオニア柱式の持つアッテイカ地方の優雅さが、東面ポルテイコの円柱の中で すらっとした姿で強調されている。この円柱の渦巻き形をした土台石の上の段には 葉脈を組み合わせた彫り物が付いており、この同じ形の彫り物は <エキナス>の上にある柱頭の上とか 柱身の襟首の上でも もう一度繰り返して出て来ている。このエキナスは イオニア式の柱頭のクッション状のものの下に置かれていて、卵鏃模様 egg - and - dart(訳注 455)の付いた 丸い輪郭を持った凸面の刳り形である。柱頭では<ハイポトラキリアム Hypotrachelium(訳注 456)>の <アンテミア anthemia(訳注 457)>の彫刻も付いているが、これは棕櫚とロ−タス lotus(訳注 458)とが 交互にずっと繋がった模様であって、屡々ア−カンサス acanthos(訳注 459)の葉の群れとか 繋がり合った渦巻き模様の上に付いているものである。柱身の襟首では イオニア式の<サイメイション cymation(訳注 460−冠刳形)>も付いていて、この冠刳形は 弯曲が二重になった波の刳り形で エキナスの飾りになっており、更に<アバカス(頂柱板)>の上にも 同じ刳り形がもう一度出て来ている。このアバカスは柱頭の最上部材であって、イオニア柱式の刳り形になっており、建物のコ−ナ−に使われている イオニア式の特別の柱頭の白の突角越しに 外に曲り出ている。円柱の一番上にくっ付いているものは 二重の渦巻き形になった柱頭の畝であって、これは二つの渦巻きの間に 穴を明けて埋め込まれてあった。以上のどの場合でも 金色に粉飾されたブロンズ製の軸柄が付いていて、渦巻き形のヴォル−ト volute(訳注 461)の芯にあるグル−プになったロゼット模様 rosette(訳注 462)になって終わっている。

○ ポセイドン神とエレクテウスとの神殿

1)  北面のポルテイコ(柱廊玄関)

○ エレクテウム神殿の西半分が 本来のエレクテウムであるが、東側半分と較べて床面が 3.05 m.許り低かった。この西半分にあるポセイドン神のケラを訪れる人々は 北面の入口から入っていった。段が 12 ケ付いた幅の広い階段が外にあって、東側の一段と高い平面と通じており 神殿の東の区画との連絡が容易く出来るようになっていた。嘗てはこの階段は 今よりずっと幅が広かった。神殿の建物の北側にある この階段を降りた所の広々とした区画には 当時は被覆石が敷き詰められていて、前庭広場(コ−ト)として使用された。その直ぐ北側は アクロポリスの丘の砦の壁面になっている。
○ 北面のポルテイコは 5.40 x 8.17 m.の面積を持つ プロナオス(前房)になっていて、<扉口の方に向いたプロスタシス>とも呼ばれ、この神殿の西側の部分に通じる入口を 遮蔽する役割りを果たしている。正面には 丈長のイオニア式円柱が 4 本立ち、その内の両端にある 2 本の奥には どちらにも円柱がもう 1 本づつ重なって立っていて、神殿の北側の周りをぐるっと回って走っている 段が 3 つ付いたクレピドマの上に 合計 6 本の円柱が立っている。円柱の高さは 7.635 m.で、内側に向けて僅かに傾斜している上に、<エンタシス>(胴張り)と 円柱の上部にゆく程直径が僅かに細くなる<メイオシス meiosis(訳注 463)>とが見られている。神殿の西の境界の所では外側に 3 m.突き出ている部分があって、ケラの北壁の延長部分沿いにもう 1 つの列か 角柱の形を作り出している。

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