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アクロポリスの丘の上の記念建造物
 
 
 
 

○ ゼウス神とアテ−ナ女神の後ろには 夫々ヘラ女神 Hera(訳注 416)とポセイドン神の二人の人物像が 腰掛けていて、起こった出来事に驚き その眼をそちらの方に向けて うっとりとこの奇跡を眺めている。この予期しない 嬉しい出来事を目のあたりにして、主たるこの 2 人の神の像の左右に展開して 参加している他の神々の像も、華麗に描写されている。破風の南側のコ−ナ−に描かれているのは、大洋から昇って来て 頭を中央の方に向けている 太陽神ヘリウス神の四頭立て二輪戦車であって、恰かも この作品を開いているかの如くであり、北側のコ−ナ−では 馬を四頭引き連れた月の女神セレ−ネ女神 Selene(訳注 417)と一緒になって 閉じており、月の女神は 天地万物の燦らめきと光とを自分の後ろに残して 大洋の中に沈んで行こうとして離れて行っている。

○ 西破風は 処女神の<オイコスの室 oikos>に通じている オピストドモス(後房)の入口の上に 被さって付いていて、そこに描かれているのは アッテイカ地方の所有と守護とを巡って ポセイドン神とアテ−ナ女神との間で行われた コンテストの神話である。破風の中央にある像は この両神であって、二人の神は夫々 自分のシムボルを手に持ち、生き生きした激しい姿勢で立っている姿を見せて 描かれている。

○ 後方に力強く揺れ動いている 裸体のポセイドン神の頑丈な身体が持っている 特徴として描かれているのは、コンテストの成り行きがはっきり判らないことに いらいらしている貌であり、一方アテ−ナ女神の方は 生き生きして堂々とした姿勢をしていて、自分が勝利を得るのを 確信していることを示している。破風の上に姿を見せている 二人の神の近くには、この二人の神のシンボル − つまりアッテイカ地方の所有を求めて 二人の神が提供した贈り物の オリ−ブの木と海水の泉とが示されている。裁決を求めてやって来た この敵対する二人の神を アクロポリスの丘の岩山に連れて来た四頭立て二輪戦車も 夫々の神の左右に置かれていた。ニケ女神が アテ−ナ女神の二輪戦車を、ポセイドン神の妻のアムピトリテ Amphitrite(訳注 418)か 又は海のニムフのネレイス Nereis(訳注 419)たちの一人が ポセイドン神の二輪戦車を馭していた。

○ 神々の使者であるヘルメス神とイリス女神 Iris(訳注 420)とが 四頭立て二輪戦車の後ろに続いていた。英雄たちの像と この二人の神々の側面を守る他の人物像とが この作品の残った部分に示されていた。そこに描かれていたのは 初期神話年代のアテネの人々で このコンテストの裁決者となった人たちであって、アッテイカの国の創設者であり 最初の王でもあったケクロップスとか エレクテウスとかであり、この二人の一族の構成員たちも一緒にいて 好意と関心を持って 自分たちの女神の勝利をじっと見詰めていた。ケクロップスとその娘の内の一人の像が 現在でも西破風の左隅に残っている。破風の両コ−ナ−には ケフイソス川 Cephissus(訳注 421)とエリダナス川 Eridanus(訳注 422)、イリッサス川とカリロエの泉といった アッテイカ地方の川や泉の擬人化神か 又はアッテイカ地方の英雄と見られる 他の人物像 2 つが描写されていた。

○ 両破風はどちらも きちっとした一定不変のテ−マ持って 構成されている。澄み渡っていて 堂々とした劇的な印象が 真ん中の所で頂点に達し、両端に向かってだんだんと穏やかになって行くという特徴を どちらの破風も持っている。群像の形で統合された破風の彫刻物が だんだん発展してゆく過程にあって、このパルテノン神殿の両破風に見られるこのような構図は その中でも最高のランクに位置付けられるものである。このパルテノン神殿の両破風で 特に賞賛を受けているのは、そこに描写されている人物像の配置とか 夫々の人物像の位置付けとか 神殿のテユムパナムの三角形という 前もって決められた拘束されているスペ−スに 人物像のサイズをうまく適合させていることとかなのである。

○ これらの両破風を創作した作家に関しては、論争もあったし 色々な意見も述べられて来ているところではあるが、この桁外れに素晴らしい創作品には 知性の特徴が具なわっており、その着想も秀れたものであって、偉大なフイデイアスと彼の門弟たちの手で制作されたものであることには 疑問の余地はない。

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