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アクロポリスの丘の上の記念建造物
 
 
 
 

○ 神像を安置してあったケラの天井は 恐らく高価な木で作られた平らなものであって、天井までの高さは 13.60 m.であった。彫刻が施され コフア−(格間)で飾られ 彩色された上に、金属製の円花飾りが 取り付けられていたことであろうと思われる。併し プテロンのコロネ−ドで出来たアイル(側廊)の方の天井は、プロナオスやオピストドモスの天井と同じように、大理石のコフア−で出来ていた。

○ この内部の円柱が こんなに高い天井に届く程 丈長であるとすれば、その円柱は 可成り太く作らなければならなかったが、余り太くすると 室内にある円柱としては適わしくないし、さればと言って 細くしてしまうと ドリア式のプロポ−ションの 厳格なル−ルから外れることとなってしまう。そこで考え付いたのは、中央にエピステユレ(台輪)を作って 円柱を上下 2 つの部分に 分割してしまうことであった。つまり このケラのアイルにあった円柱の数は 23 本ではなくて、< 2 層建て>の上下合わせて 46 本であったことになる。

○ これまで作られて来た古代の神殿は、どちらかと言えば 外向きを対象としたものであった。併しこの神殿では 礼拝像には近付かずに 周りのアイルを歩き、一定の距離を置いて 像が眺められるという仕組みになっていた。このケラはつまり 女神の礼拝像を崇めさせるための いわば内部神殿とも言えるものであって、こういう形の試みとしては 最初のものであった。このケラには 横壁に窓が付けられていないので、内部は薄暗かった。光線が入ってくるのは 入り口の扉と 扉の上にあった 扇形窓 fan-light(訳注 427)を通してだけではあったが、それで充分であった。信者がこのケラの中に入って来ること自体が そもそもそれ程 頻繁にあった訳ではないし、周りの磨かれた大理石とか 像そのものの素材の金の反射光とかもあったのである。

4)  アテ−ナ女神の礼拝像

○ 金と象牙とで出来たアテ−ナ女神のこの彫像は フイデイアスが作った見事な作品であって、三方をコロネ−ドで取り囲まれたこのセコス(神像安置所)の 遠い端の所に安置されていた。大理石で覆われていない 多孔性石灰石(ポロス石)の長方形が このセコスの中央にあるのが、今でもはっきり見出せる。礼拝像の土台が この上にあったが、その寸法はもう少し大きくて 幅 8.05 m. 奥行き 4.10 m. 高さは 1.20 m.というものであった。真ん中に 今日でも残っているのが見られる孔は、木で出来た彫像の核の部分の軸になっていた 大きい梁を そこに突っ込んでいたものである。

○ 武装したアテ−ナ女神が 静かに直立している。真っ直ぐに伸ばした右脚に 身体の重心を大部分懸けていて、その右脚は 外衣の襞で隠れてしまっている。左脚は膝の所で軽く曲げて 後ろに引いている。円柱の縦溝装飾を想い起こさせるような 優美な襞を作って ドリア式のキトンを纏っており、腰の上でベルトを締め 首と両腕と両足先だけは 剥き出しであった。中央にゴルゴネイオン Gorgoneion(訳注 428)の付いたイ−ジス aegis(訳注 429)の盾が 女神の胸部を覆い、中央にはスフインクス、両側にはペガサス Pegasus(訳注 430)の飾りのある アッテイカ地方のヘルメットを頭に冠って、前方を向いている。傍らの盾の端は 台座の上にまで届いており 女神はその盾の上に左手をついていて、盾の内側の窪みでは 蛇が体をすり寄せて とぐろを巻いている。この蛇は アテ−ナ女神の信頼出来る仲間の エリクトニウスを表わすものであった。自分の方を向いた 高さが 2 m.許りの有翼のニケ女神(勝利の女神)の像を 右手で保持している。右側には 梟の付いたオリ−ブの木の幹があって、右手の重量を支えている。大きい槍を 手では持たないで、肩の所に凭り懸からせている。

○ このアテ−ナ女神の礼拝像の高さは 土台もろとも凡そ 13 m.であった。フイデイアスが B.C. 500 - 432 年に作った この彫像は、顔 咽喉 手足といった 剥き出しになった身体の各部分は 象牙の薄い層で覆われ、木製の芯を覆っている女神の外衣は 厚さが 7.5 mm.の 純金の延べ板で出来ていて、この外衣に一ぱい出来ている襞すらも 美しい打ち出し模様の付いた黄金板で 上張りされていた。こういった貴重な素材は 木で出来た芯の核に合わせて 彫刻されていて、その上覆いを構成するものであった。使用された金の量は 44 タレント つまり 1 トンを僅かに超える重さであったとされ、この金の部分は取り外して その正確な重量をチェックすることが容易く出来たといわれる。

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