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アクロポリス美術館
 
 

◎  No.0624 仔牛を担ぐ人の意の <モスコポロス Moschophoros>の像

○ イミトス山産の大理石で出来ている ア−ケイック期のこのグル−プ彫像は、両肩の上に アテ−ナ女神への供え物として差し出す仔牛を担いでいる 強くて体格の良い ハンサムな男性を描いた像で、その高さは 1.65 m.である。胴体の部分は  1864 年にアクロポリスの丘の上で出土し、多孔性石灰石の長方形の土台は  1887 年に出土した。この台石には 彫像の右足のくっ付いている台座があった。

○ 自らの肖像を女神に奉献したこの人物は、或るデイ−ム deme(訳注 558- 市区)からやって来た 富裕な自営農家の主人で、台座の上に付いた彫り込みは 半分消えてしまったが、像の寄進者の名前が ロムボス (Rh)ombos かコムボス (K)ombos であったことを伝えている。犠牲の供え物にする小さい仔牛を幅広の肩に担いで 神域に詣でる姿を 優れた彫刻家に刻ませ、アテ−ナ女神に奉献したものであることが知られる。前開きで 薄くて凹凸のない外衣のテユニックが 身体の輪郭の線にぴったり沿って 両肩から垂れ下がり、殆ど両膝の所まで達していて、身体の前面は完全に隠れており、両腕は 両肘から先が剥き出しである。額を縁取った 珊瑚か真珠のような形の巻き毛が 耳の後ろから 3 本の弁髪になり、両肩から 胸に垂れ下がっている。頭髪は細いリボンで縛られていて、頭のてっぺんは 着色に便利なように、表面を磨かないままで 粗く残してある。嘗ては色石が嵌め込まれていた両眼を 大きく見開き、顔の表情は陽気で 口許は微笑んでおり、顎髯は顔の周りを縁取って剃り込まれた 上下の唇の周りでカ−ブしていて、これら総べてが この興味深い彫像の持つア−ケイック期の特性を示す印しとなっている。

○ モデリングが著しく柔軟で、両腕を上に挙げて 肩越しに担いだ仔牛の両足を掴んだ形のパタ−ンが、男と牛 寄進者とその供え物を 密接に一体にしている。全体としての構成 特に蹄を握った両手が 豊かで逞しい身体の中央に来て、両腕と仔牛の両肢とがX字形に交叉しているという様式は、全くユニ−クであって 極めて印象的である。
○ 美しくて心が清く 誠実な男の頭部像と その右側にあって 安心して主人の頭の方に向けて曲げている 無邪気に信じ切ったこの仔牛の頭の像との 2 つを 並列に並べて、まどらかな柔らかさに溢れた表現を創り出しており、この簡明さは B.C.6 世紀初期に見られる典型的な構成であって、珍しく愛嬌のある纏まりを持つに到っている。この仔牛は 女神に犠牲として差し出されることが 予め決まっている宿命を携えて、この男に従ってついて行っているのである。作品の様式には 青髯の怪物の像(第 2 室 収蔵品 No.0035)と多くの共通点があるのが 見受けられる。アッテイカ地方の彫刻家が  B.C. 570 年頃に彫ったものであるが、今日までの所 この工匠の作った作品は、他には何一つ残されて来てはいない。

○ この人物の身体の裸体の部分を除けば この像全体には彩色が豊かに施されていたが、今は 仔牛の皮膚に 青い色の痕跡が残っているだけに過ぎない。

◎  No.0630 大理石で出来た ア−ケイック期のスフインクスの像

○ 獅子の身体を持ち 女の頭をして翼を持った 神話の怪物スフインクスの奉献像で、今後ろ足で座り 真っ直ぐに前方を向いている。丈高の円柱の上に据え付けられていた。慣例では 横向きになっているが、正面を向いたこの像の顔の表情には、慣例に反して その超自然的な天性の知性とか 自信とか 特長のある顔立ちとかが示されている。 B.C. 560 - 550 年頃に作られた作品である。

○ ペンテリコス山産の大理石で出来ていて、像の高さは 61 cm.である。焦げた痕跡がある。素晴らしい微笑をたたえて作られている この像の顔の表現が この彫刻作品に与えているものは、信じられない許りの完璧なその優秀さと 記述することの出来ない優雅さとである。アッテイカ地方の彫刻の上に イオニア地方の影響が及んでいたことを立証する 一番古い彫像の一つである。

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