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アクロポリス美術館
 
 

◎  0009 + 0055 所謂<ヘラクレスの神格化(訳注 559)>を描いたポロス石の破風

○ オリムポスの山上で 神々の前に姿を現わしたヘラクレスが、神々に迎え入れられる場面(所謂<ヘラクレスの神格化>)を描き出した やや小さ目のア−ケイック期の破風で、B.C.580 年頃の作である。

○ No.0009 は右半分で、横顔で描かれたゼウス神が 中央で王座に座している。正面を向いたヘラ女神が 王座の後ろの背景に 大胆に描かれている。ヘラクレスは ゼウス神に向かって進み出ており、ヘルメス神が その後に続いている。彩色が良く残っている。細かい部分まで装飾しようとしていることと、或る種の幼稚な感覚ではあるが 深さを出そうとしていることとは、特に注目に値いする。No.0055 は同じ破風の左半分で、一人の像が残っているだけである。

◎  No.0577 大理石で出来た四頭立て二輪戦車の馬の像

○ この四頭の馬の胴体は、奉献された四頭立て二輪戦車の部分となっていたもので、ア−ケイック期の B.C. 570 年頃に アッテイカ地方で作られた群像である。殆ど丸彫りに近い 非常に深い浮き彫りで、正面を向いている。後ろの厚板は 現在残っていないが、四頭の馬の前半身と背景の厚板とは 同一の大理石塊から彫られたものである。四頭の馬が曳いていた戦車が 背景の厚板に 恐らく絵で描かれるか 又は浅い浮き彫りで彫り込まれ、真ん中の二頭の中央には 馭者の像が正面を向いて 恐らく浅い浮き彫りになっていたものと思われる。馬が勇ましくとび出し、その身体の輪郭が 人目を惹いている。中央の二頭の馬が 互いに語り合うかの如く 頭を向け合い、両側の馬は 共に外を向いて、何れも真横の顔を見せている。鬣(たてがみ)を一段高く彫り出し、青の彩色が 向かって右の馬に残って見られる。頭部の勒(くつわ)の輪郭の線刻にも 彩色があったろうと思われる。

○ 通例は 側面を典型とする馬の体躯を 正面から表現しようとした 大胆な試みがなされており、両眼、鼻、口、顎などの造型は 簡潔で力強く、勇ましく飛び出している馬の身体の輪郭の作りが 印象的である。全体として見ても、細部を見ても、この作品の特長となっているのは、釣り合いの採れた調和と美的な素朴さとである。

◎  No.0593 柘榴を持ったコレ−の像で、頭がない。

○ 制作時期が最も古い ア−ケイック期のコレ−像で、アテネ人の仕事場で出来た B.C.570 年頃の大理石の作品である。エレクテウム神殿の東で  1887 年に出土したこの像の高さは 91 cm.を超える位で 大して大きくはないにもかかわらず、その形は柔軟さに溢れ、簡素な輪郭には 生命と表情に充ち満ちた躍動が見られる。袖付きの下着のキトンを着た上に ドリア式のペプロスとヒマテイオンとを着ていて、左右対称に 両肩を覆って垂れ下がり、背中に覆い被さっている。左手では 胸の前で柘榴を持っており、右手は垂直に垂れて アテ−ナ女神に捧げるべく 花冠を持っている。

◎  No.0052 所謂<オリ−ブの木の破風>

○ 呼ばれている名の示す通り 背景には木が刻み込まれている。どれであったのかは判っていないが、アクロポリスの丘の上にあったア−ケイック期の建造物の ポロス石(多孔性石灰石)で出来た小さい破風である。パンドロセイオンか 又はアテ−ナ女神の一番古い神殿のものであったと 嘗ては考えられたこともある。併し現在では 中央の建物は水汲み小屋であり(水を汲んだ婦人が出て来ている)、此処に表現されているのは アキレスがトロイロス Troilos(訳注 560)を殺害するために 聖なる木立ちの中で待ち伏せをしているという 伝説であると考えられている。この破風に見られる 丸彫りに近い浮き彫りで表現されている建物は 多分ドリア式の旧(もと)の古いエレクテウム神殿であり、背景には オリ−ブの木が生えており、入り口の前には アテ−ナ女神の女神官と見られる一人の婦人が立っていて 男女の退却行進を見守っているところであるとする意見もある。総べての人物像が 現在まで残って来ている訳ではない。 B.C. 6 世紀の第 2 四半期の間に作られた作品である。

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