《 第 3 室 》
○ 第 3 室には 彫刻の付いた B.C. 6 世紀の装飾物の一部の作品が、その建築部材と共に 続いて展示されており、更に加えて 浮き彫りになった画像とか <コレ−>タイプの彫像とか 座った姿勢でいる婦人像とかの作品もあった。
◎ No.0677 林檎を持ったコレ−の上半身像
○ ナクソス島産の大理石で出来ていて、この像の高さは 53.5 cm.である。 1886 年と 1887 年に エレクテウム神殿に近い所謂<ペルシャの石積み Persian rubble(訳注 563)>の中から 2 体の少女の彫像が断片となって出土した。どちらも B.C. 6 世紀前半に 献納の供え物としてアクロポリスの丘に奉献されたものである。東方からアテネに持ち込まれたのか アテネで彫刻されたのかは 明らかでないが、何れにしても サモス島出身の工匠が作ったものと知られており、ル−ブル美術館にあるケラミュエス Cheramyes のヘラ女神像の ほんの数年前に作られたものである。
○ 薄い材質の袖の付いた 長いイオニア式の下着のキトンを 美しく垂らし掛けて着た イオニア地方風の作風の像の 最も古い作例で、簡素な直立形の立像の 上半身像である。キトンが身体の下部を覆う辺りは、平行で垂直の 細い襞になって 円柱のような外観を呈している。右肩と右腕の上部には 丈の短い外衣を掛け、幾分だらしなく下に垂れた右手では 衣の端を軽くつまんでいたことであろう。左手は 乳房の前に持っていって 献納物の林檎を持っていることから、この像は アフロデイテ女神に捧げられたものとも 推測されている。
○ 面長の頭部は 丸々として 力強い首の上に載っかって、真っ直ぐに前方を向いている。キトンと外套の縁の線が 緩やかなカ−ブを描いて、首の付け根を縁取っている。横に真一文字になった美しい口には 柔らかい両唇が付いており、小振りの両眼は ア−モンド形をしていて、縦長の杏仁形をした顔に ぺったり付いている。生気のない長目の上瞼は両方とも 故意に付けられた皮膚の皺と一緒になって、両眼に 幾らか疲れた表情を与えている。頭髪は真ん中で分けられており、額に被さった所でも 頭の上でも 長くて美しい波状の形になっている。背後では、縦横両方の線で 境目をはっきり付けられた ふさふさした幅広の塊まりの形になって、肩胛骨の所まで垂れ下がっている。頭髪は 細くて長いバンドで 一緒に結び合わされている。この頭バンドは後頭部では 実に風雅に結ばれていて、その結び目とそこから分岐した 二つの同じような両先端とが、柔らかい塊まりになったこの頭髪の上に 装飾の如くくっ付いている。
○ 素朴な活気や 生命の激しい充実感は、 20 年許り早く作られた ベルリンにある女神立像の張り詰めた型を 突き破ってしまっており、一段と柔らかく表現された その造型の感じは、人間的である。弯曲した平面や 流れるような線を好んでいて、その美の理想は、一段と感覚的で デリケ−トに調和が取れており、生き物の自然な生活に似通っている。東方地域の沈着と聡明さとが このコレ−の瞑想的な顔に見出され、数年後に作られた ル−ブルのヘラ女神の像と比較しても、同時代の他の作品の型と 際立って異なった特色を持っていることが、良く判る。
○ 左の肘、左腕の上膊部と前膊との中間の部分、それにこの人物像の左側に垂れている 頭髪の幾つかの部分は、最近になって修復された。頚部にあった割れ目は 補修で埋められてしまっている。
◎ No.6505 - 6507 アテ−ナ女神に奉献された 刻み込みの付いた 2 本の円柱
○ B.C.5 世紀初期の作品で、女神に対するありきたりの供え物であった 小さい彫像の台石として用いられたものである。No.6505 の円柱の上にあった小像は、きっとブロンズ製のもので、恐らく<パラデイオン>と呼ばれるタイプのものであったろう。
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