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アクロポリス美術館
 
 

◎  No.0632 スフインクスの座像

○ 奉献物であったこのスフインクス像は パロス島産の大理石で作られた ア−ケイック期の座像で、現存している部分の高さは 55 cm.である。もとは 丈高の石柱の上に据えられていた。アクロポリスの丘の上で  1882 年から 1883 年にかけて出土した。
○ 宿命によって父を殺し、スフインクスの懸けた謎を解いて 知らずに母を妻とした テ−ベ Thebes(訳注 564)の王オエデイパス Oedipus(訳注 565)の伝説に スフインクスの名が始めて出て来るのは、B.C.6 世紀のことであった。この肉食獣の胴体をしていて 翼があり、女性の頭部を持った架空の動物が、ギリシャ人には 災いを防ぐ力を持った霊獣であり、肉体的にも 心霊的にも 測り知れない力を持つと信じられて以来、ア−ケイック期には その彫像が幾つも、祭殿に奉献されたり 墓の上に立てられたりした。神殿の器具や器で飾られたフリ−ズにも 獅子や豹、グリフインやサイレン Siren(訳注 566)、更には神話に出て来るその他の生き物と共に 良く見られている。動物の身体と人間の頭部とを くっ付けるという着想は、もともとは 古代エジプトの芸術から来たものであるが、古代エジプトに見られるものは 男性の頭部像を付けるというタイプに限られていた。

○ 両前脚と後ろ脚とが 二つとも付いていた身体の下部は、亡くなってしまった。現在残っているのは 痩せて筋張った身体の部分で、その形は ほっそりした容姿をしている。大きい翼が 2 枚 鎌のように堅く引き締まった弧を描いて 弯曲し、重なり合って 胸と背中にくっ付けられている。胴体が完全に横向きになっているのに対して その上に載っている頭と首とは 正面に向けて回している。大ぶりの顔は穏やかで 丸々とした杏仁形をしており、幅広の口が真一文字に走り、眼尻の上がった両眼は 厚ぼったくて不格好な両上瞼のせいで 盛り上がり、親しげな表情を見せている。頭髪は 独特の縒り房の大きい弧を描いて 高い額の周りを取り巻き、両耳の後方から 両肩に垂れ下がっている。幅広のバンドで縛り上げられ、背後ではそのバンドの下から 均一形の弁髪を並べたように拡がり、先の方で細くなったその弁髪は 恰かも ビ−ズ玉の太い紐のような形に作られている。バンドの上では頭髪は 波状の彫り込みが余り付いてなくて 簡略に示されており、細部は 彩色で示されていた。頭のてっぺんの 釘穴の付いた丸い円盤状のものは、花で出来た蔓(つる)の植物用のものか 又はメニスコス meniskos と呼ばれる 金属製の標識で、彫像が鳥に汚されないように 防ぐ役目をするものをくっ付けるための 釘穴である。

○ 人物像の胸と背中には 両翼の所まで、着色が赤と黒と黄色で 鱗模様に、完全に施されている。両翼の上の羽毛も 同じ色を使って描かれていた。

○ B.C.6 世紀の後半の 540 - 530 年頃に作られた アッテイカ地方の彫刻家の作品で、収蔵品 No.0590 のランパン Rampin の乗馬者の像と 収蔵品 No.0679 のキトンとペプロスとを着たコレ−の像との間の年代に作られたものである。その若々しい顔には 上品な穏やかさ、慈愛溢れる善良さ、可愛い優しさが見られ、この像の表情からは スフインクスの持つ悪魔のような性格は、取り除いて処理されている。広い構成と 柔らかくて丸々とした顔の形から見て、この像は 疑いもなく、イオニア地方の芸術の影響を受けて出来たものであることが 知られる。

◎ No. 4406 ポロス石(多孔性石灰石)で出来た 小さい建物のコルニスの部分

○ このドリア型式の建物は、<ビルデイング D>と呼ばれ、アクロポリスの丘の上にあった。

◎  No.4404 コルニスの大きい部分

○ エピステユレ(台輪)、トリグリュフ、メト−ペ(小間壁)及びゲイソンがあり、<ビルデイング D>と呼ばれる ドリア型式の建物の部分である。

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