◎ No.0682 ア−ケイック期の大きいコレ−の像
○ B.C.6 世紀末に近い 520 年頃に作られた ア−ケイック期のコレ−像で、島産出の大理石で出来ており、イオニア地方の作品と思われ イオニアの影響が強く見られる。エレクテウム神殿の北西で 1886 年に出土した。全長 1.83 m.で、焼けた跡がある。アクロポリスの丘の上で出土した イオニア風のコレ−像の中では 一番独特なもので、今日まで最も良く残って来た。このコレ−像は 当世風な流行の影響を 迸り出る許りに強く受けていて、極端に丈高で 不釣り合いな身体つきをしており、顔は一面角張っていて その態度は尊大であり、友好的な雰囲気を見せて作られているとは とても言えない。冷たくて 人を遠ざける像ではあるが、その顔の断固とした線に 幾分皮肉に見える<ア−ケイック・スマイル>が ひょっと浮かび出ている。
○ 唇は上向きに曲がっており、両眼は見開いて 斜めになっている。頬と顎とは 可成り突き出しており、耳の位置が高くて 大きいイアリングで飾られている。眼球には他の材質が嵌め込まれている。ヘアスタイルは入念に しかも巧みに図式化され、色々なタイプの 4 つの豪華な結髪になり 突き出た胸の所で房になって、穏やかに垂れ下がっている。着ている衣装は 値段の張ったもので、わざとらしい優雅さを具えている。イオニア式のヒマテイオンの平らな中央部の縁には、装飾の色彩が 今日でも良く残っている。多色の宝石でふんだんに飾られ、左手首には 腕輪をしている。顔と両眼とに見られる 撥ね付けるような表情は、この像に対して魅入られることが許されぬものにしている。この像の作者は メニスコス Meniskos と見られているが、細部に十分な注意を払って作られている点に この作者の非凡な才能が示されている。
◎ No.0143 猟犬の像
○ 獲物に跳び掛かろうとして 緊張して蹲(うずく)まっている胴長の猟犬の 注目すべき像で、像の高さは 51 cm. 長さは 1.24 m.である。B.C.6 世紀の終りに近い頃の B.C. 520 年代の或る時期に アッテイカ地方の彫刻家の手で作られた素晴らしい作品で、内陸地産の大理石で作られている。この猟犬を かくも真に迫って生き生きと 力強く扱って描いていることは、この作者が 非常に有能な才に溢れていたことを示していて、恐らく収蔵品 No.0631 のギガントマキアの破風か 又はランパンの乗馬者のグル−プ像の制作に当たったのと 同じ彫刻家の作品であろうと見られる。
○ 痩躯短毛で 如何にも精悍そのものの ラコニア地方 Laconia(訳注 573)産の犬が、身体を伏せ 鼻先を伸ばして、獲物を狙っている。折り曲げた前肢の簡勁な筋肉、細長く突き出した頭部 それに胸に肋骨を浮き出させて ぴちっと引き締まった胴体には 贅肉が全く見られず、素晴らしく力強いモデリングを示している。
○ そっくりそのまま完全に現存しているこの犬と その間近で出土した類似したもう一頭の犬の採っている姿勢とか 動作とかから見て、これらの 2 頭の犬は パルテノン神殿とプロピュライア入口門との間にあった ブラウロニア・アルテミス女神の神域の入り口に 番人として 2 匹対になって置かれ、狩猟の女保護神アルテミス女神の聖地を守るべく 奉献された供え物であったのであろうとする仮説が立てられている。
◎ No.0606 ペルシャ人の乗馬者の像
○ 内陸地方産の大理石で出来ていて、像の高さは凡そ 1 m.であり、馬の前半身と乗馬者の足だけが残っている。B.C.520 年頃の作品と見られる。乗馬者は 極端に前の方、殆ど馬の首の辺りに跨がっている。馬は首を曲げないで 真っ直ぐに前方を向いており、乗馬者の衣服には 豊かな色彩が施されている。この赤いブ−ツと 当洋風の色鮮やかなコスチュ−ムとは、ギリシャのものではなく、スキタイ地方 Scythia(訳注 574)か ペルシャの衣装の特性を示しているものである。この乗馬者が北方地域の住民の衣装を着ていることから見れば、この像は恐らく アッテイカ地方の貴族で ミルテイアデスのようにこの<異邦の>領域に資産を持っていた者の 奉献した物であったろうと思われる。
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