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アクロポリス美術館
 
 

◎  No.0674 丈長の下着のキトンと上衣を着た ア−ケイック期のコレ−の立像

○ パロス島産の大理石で出来ており、像の高さは 92 cm.であって、膝の所までが残っている。アテネのアクロポリスの丘のパルテノン神殿の南西で  1886 年に出土した。アテ−ナ女神への献納物として立っていた彫像で、収蔵品 No.0682 のコレ−像が外向的であったのとは 細部の多くの点で異なっていて、女性の繊細な上品さと 女らしい慎みとを持っており、ア−ケイック期の成熟期である B.C.500 年頃に作られた 幾つものコレ−の彫像の中で 最も傑出した 素晴らしいものの一つである。

○ 身体は繊細で ほっそりしており、幅の狭い両肩が 流れるように上品なスロ−プを作り、スリムな長い首が 特に強調されて、人目を惹いているように見える。前に突き出した右前膊は、別個に取り付けられたものである。右手には鉢か 奉納品の供え物を持っていたことは、疑いを容れない。衣服が 実に巧妙に表現されていて、袖のあるキトンの薄い材質が 身体の上半身を覆い、並行した 美しい畝状の襞を作っている。身体の下半分では 長いカ−ブになって垂れ下がり、左手で片側に寄せている。キトンの上には 重厚な毛の材質の 袖の付いてない上衣を着ており、右肩の上で 固定されて、折り返しの付いたまま 胸部を斜交(はすか)いに横切って 左脇下に走っている。この外衣は両端で 段々になって折り重なった 長い縦の襞を作って、身体を覆っているが、身体をきちっと 抱き締めているようにはなっていない。縦長の杏仁形をした顔の周りを ばらばらの縮れ毛に 芸術的に作られた頭髪の塊まりが 縁取って取り巻き、帯状頭飾りの装飾の付いた その頭髪は、背後では 横仕切りの付いた 左右対称の素晴らしい編み毛になって、胸の上の所まで 下に垂れ下がっている。カ−ル状の長い撚(よ)り毛の房が 3 組づつ 両方の耳の後ろから前に出て、浅い乳房の周りに ぴったりとくっ付いている。この両耳には、丸くて大きい 円盤形の装飾が付けられている。
○ コレ−の衣服には 明るい着色の痕跡が良く残っていて、この彫像に特別な価値を与えている。キトンの両袖の編み目の部分は 赤い縞のある濃い緑で、上衣は 緑と青と赤のロゼット(円花)模様で彩られ、ずっと下の縁には 緑と赤の曲りくねった 襞飾りが付いている。胸部を横切って斜交いに走る 折り返しの襞飾りの縁にも、緑の着色の痕跡が見られる。頭髪は 赤と黄色で、両眉と両瞼と瞳孔 2 つは黒、眼球の虹彩は褐色で 黒い縁が付いている。耳の青い円盤にも 赤の円花模様が付いており、帯状頭飾りは 赤い点が幾つも付いた 青の曲りくねったパタ−ンが、緑の間に包み込まれた模様になっていて、顔には 繊細な黄色の錆が出ている。

○ B.C.6 世紀末期の アッテイカ地方の最も秀れた巨匠の一人が この彫像の作者であって、この上ない技巧を駆使して 鑿(のみ)を扱い、各種の衣服の物質的な特性や 結髪の違いを、驚くべく忠実に表現した。大理石の処理の仕方が 他と異なっていて、 B.C. 6 世紀のアッテイカ地方の彫刻の 究極の絶頂点を表現したものと言える。形の美しい この謎のような顔には、物憂い両瞼が被さり 両眼の眼尻が激しく傾斜して 吊り上がっていて、その顔に浮かんだ 物思いに沈んだ独特の表情は、この期に典型的なものである。それは一人一人の個人の独自な特性の描写に 作者の関心が移っていて、口には はっきりと示された境目がなくなり、顎と頬の軟らかくて変わり易い輪郭が 強調されており、嘗てあった あの伝統的に有名な<ア−ケイック・スマイル>は、その形の良い謎のような顔面から消えて、恰かも他の表情を探し求めているかの如くである。その物思いに沈んだ容貌に 映し出された乙女心の生気は ア−ケイック期の持つ制約を乗り超えて、新しい発展が現われて来ることを 前以て示しているのである。

◎  No.0124 彫り込みのある小さい円柱

○ 誰かの彫像の土台として用いられた イオニア式の柱頭が付いている。この円柱を含めて総べてのものが、アテ−ナ女神に対する奉献物であった。

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