《 第 8 室 》
○ この大部屋に置いてあるものは、ペルクレスの年代及び ペロポネソス戦争の年代( B.C. 448 - 405 年)に アクロポリスの丘の上にあった 3 つの大きい建造物の装飾であって、パルテノン神殿のゾフオロス、エレクテウム神殿のフリ−ズ(部屋の中央部にある 十字の壁面)及び勝利の女神 アテ−ナ・ニケの神殿の胸壁の 3 つである。部屋の南面には 2 つのドアの間に パルテノン神殿のフリ−ズの北側の彫刻が、そのあったままの形で、即ち北を向いて展示されている。部屋の反対側 つまり北面には、フリ−ズの南側にあった 騎馬者の像の厚板が幾つか、南を向いて置かれてある。部屋の東の区画には フリ−ズの東面にあった 幾つかの厚板が置かれてある。
◎ パルテノン神殿のゾフオロス
○ パルテノン神殿の有名なこのゾフオロスは ペンテリコス山産の大理石で出来ていて、人間が芸術の面で到達し得た 最大の傑作とも言えるものである。古代アテネの最大の祭典であった 大パンアテナエア祭の行進( page 028 参照)をそのテ−マとしたものであり、長い帯状の浮き彫りになって、神殿の中央の建物の 4 方の壁に 高く掲げられていた。( page 096 - 097 参照)
○ このパルテノン神殿のゾフオロスでは、幾つもの人物像の間の繋がりとか、その背景面に対する関連とかが、一層密接なものとなり 一段と強固にすらなって来ている。浮き彫りを構成している 一つ一つの因子が、お互いにより大きい限度に到るまで もっと滲み込み、未だその上に もっと仲好く融合してしまっている。この神殿の浮き彫りの中では 背景面はその物質的な特性を 非常に大きく喪失してしまっていて、その描写の中での 一つの要素に過ぎないものになってしまっているように見える。
○ この行進の準備をし、出発しようとしている場面を描写した ゾフオロスの西面は、殆ど総べて今でも この神殿建造物の上に、旧(もと)のままの姿で残っている。他の 3 面にあった厚板は その凡そ 2/3 に当たる大部分を エルギン卿の代理人が持ち去って、今では 大英博物館に展示されている。併しこのアクロポリス美術館にも その凡そ 1/3 に当たる 20 のオリジナルな厚板が残っており、特に北面にあったものが、 13 で最も多く、南面は 5 つ、東面が 2 つである。行進は フリ−ズの北面と南面をずっと進んで行って、人間の眼には見えないけれども、オリムポス山の神々がその到着を待っている 神殿の東面の方に向かっている。展示品の厚板が お互いに繋がっていない場所には、亡くなってしまったか、或るいは 今では大英博物館に行ってしまっている 他の厚板が、そこにあったことを示している。
○ 北 面 フ リ − ズ (西 か ら 東 へ)
◎ No.0859 武装した アポバテスたちの像
○ このフリ−ズの中では 一番美しいものの一つである。左側に描かれているアポバテスは、動いている二輪戦車から 降りて走り、それに追い付いて 又載るという訓練をしている。若者の着ている 下着のキトンの襞が繊細であり、色彩の付いた盾の内側を見せて (?)、背面に向かって立っている 若者の身体の裸の部分が、特に素晴らしい。第 2 の若者は 後ろに首を回し、左方に向かって動いているが、そのヒマテイオンが 風で開いており、その動きや重厚な襞が、この若者の身体の裸の部分の 素晴らしい背景を形成している。
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