◎ No.0972 ニケ女神の像 2 体を描いた 完全な厚板
○ 胸壁の北面にあった厚板であって、その高さは 1.05 m.で、幅は 1.23 m.である。有翼のニケ女神が 豊かな襞のある外衣を着て、始末に負えない許りに反抗的な牡牛を 犠牲に供するために曳こうとして 争っている。左のニケ女神の像は、左足をしっかりと岩に突っ張って ロ−プに繋いだ獣が 反抗するのを引き戻しており、右側のニケ女神は 牡牛の前にいて 右手で牡牛の角を掴み、紛う方なく この牡牛を制御しようとしている。真向かいに吹く風の流れが 逆向きで、ニケ女神の姿を鼓舞し 襞のリズミカルな調和を作り出しているが、その効果は 必要な以上と言える位 素晴らしいものである。ニケ女神が前に進み出て 左足を伸ばしているが、その下の部分に 繊細な洗練さを出そうとしているのが 特徴を示している。風が重厚なヒマテイオンを持ち上げて、ニケ女神の上品な踝(くるぶし)が見えているからである。この構図が伝えるダイナミックな動作の印象が 此処で目を惹いている。
◎ No.0973 <サンダルの紐を解く ニケ女神>の像
○ 胸壁の恐らく南側面にあった厚板の右半分で、ニケ女神が描かれており、厚板の高さは 1.06 m.で、幅は 52 cm.である。女神の前にある(収蔵品 No.0994 の厚板参照)犠牲の祭壇に 素足になって入ってゆこうとしていて、左足はもう裸足で、今右足を上に挙げ 伸ばした右手で そのサンダルを脱ごうとして、自分の身体を屈めている。女神の長い着衣は、右肩からずり落ちてしまっている。透明な許りの着衣の下からは 殆ど裸体も同然の 若い少女の健康な肉体の輪郭が きらめいて見えており、外衣は 前膊からぴったりと 人物像の周りに纏わり付き、下半身の周りを 掃くような襞を作って 垂れ下がっていて、その襞は長く深くて 幅の広い蔭の谷を創り出し、その蔭の谷から隆起が幾つも 明るい光の中に盛り上がっている。
○ 浮き彫りになったこの名作は <リッチ・スタイル>と呼ばれる作品の特徴を示す典型であり、トルソ像だけとは言え、若々しい上品さを具え、その魅力的な衣服は 素晴らしい襞を作っている。身体を曲げ 右脚の膝を持ち挙げ 左脚は膝の所で曲げるという形の女神の身体と、これを覆っている着衣との間にある関連の クライマックスが描かれている。この浮き彫り像は 最も優れた逸品であり、真似てもう一度作ることも出来ないものであって、名は知られていないが 誰か偉大な巨匠の作った作品である。
◎ No.0977 左に向かって進み、小さい階段を昇っている ニケ女神の像
○ 女神の着衣には 起伏した襞が豊かに見られる。砦の北面にある小さい階段の上に 高く置かれていた。多くの人がその階段を昇り、プロピュライア入口門を通らずに 直接に ニケ女神の神殿に行くことが出来た。従って やった来る人たちも 勝利の女神も、共に同じ階段を昇ったかのように 見えるのである。
◎ No.0989 王座に座るアテ−ナ女神と トロフイを掲げるニケ女神の像
○ 胸壁の南西のコ−ナ−の所に 置かれていた厚板で、 No.1 の方は高さが 94 cm.で 幅が 77 cm.であり、 No.2 の厚板は 高さが 90 cm.で 幅は 45 cm.である。アテ−ナ女神はヘルメットを冠り、長い下着のキトンを着て、王座に似た外観の岩に腰掛け、肘で曲げた右腕を 傍らに立てた盾の上に載せている。キトンの襞が 身体の輪郭に沿って流れるように走っていて、抑制された流動性を示しており、身体の下部では 投げ掛けられたヒマテイオンと一緒になって 両足に纏わり付いている。
○ アテ−ナ女神に向かい合って しなやかな有翼のニケ女神の像があり、手を差し伸べて 女神に勝利のトロフイか 何かの献げ物を手渡している。ニケ女神は 袖のない軽い下着のキトンを着て、ヒマテイオンを纏っている。ヒマテイオンは翼の下の腰の辺りに 緩く垂れ落ちて 両膝の間で厚められている。幾らか斜めになったそのポ−ズと 左足の曲線が、女神の飛び切り素晴らしい形の優雅さを倍加している。
◎ No.1002 ニケ女神の翼
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