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図版 001 馬の立像   NEXTnext-図版 002
   

図版 001 馬の立像

○ ブロンズで出来ている像で 明かるい緑色の青錆が出ており、その錆の一部は 瘡(かさぶた)状になっている。像の高さは  16 cm.( 6.25 inch.)である。ペロポネソス半島の出土品で、恐らく オリムピアで出土したものであろう。ベルリンの国立美術館に収蔵されている。(クラシカル考古品部。収蔵品 No. 31317)

○ 無垢の鋳物で、略々長方形に近い形をした土台もろとも 一塊の鋳物として鋳造されていて、この土台には 三角形をした透かし彫りの装飾が 3 列に並んで飾り付けられている。馬の本体そのものは 歴然と様式化されていて、表面の造型の細部は すべて省略されてしまっている。馬の特色を一般的に把(とら)えて表現する手法を採ろうと この作者が意図したものであり、そのために 付随的な細部に到るまで すべてを表現してしまうことを差し控えたものであるのは、明らかなことである。他方では併し この作者は、他の哺乳動物と馬との相違点を判別出来るものについては 何でもすべてを強調しようと努めており、中でも 長くてすらっとした脚、力強く発達した肢体の 前 1/4 と後部 1/4 の部分、それになで上げた形をした鬣(たてがみ)といった部分に この点が良く見られている。男根や 曲がって垂れ下がり土台の上にぴったりとくっ付いた 長くて細い尻尾も、同様に重要な意味を持ったものと見られている。

○ この種馬の胴体は 短躯で 細い円筒形をしており、長くて幅が広く 扁平な首は どちらかと言えば やや高く持ち上げられている。顎を僅かに上に挙げており、顎の線は鋭い曲線になっていて、それが頭部と首との間に付けた区切りとなっている。併し、曲線状の耳と 殆ど円筒形になっている鼻とは 互いに一体となってしまっていて、その境目が何処か はっきりしていない。頭は僅かに上を向き、鼻づらの方に向かって 鼻が拡がっている。円形の深い孔が 口の替わりに付いていて、眼窩と同じように 嘗ては鉄栓が詰められていたが、どちらも 今では亡くなってしまった。脚と首の輪郭線は 彫り込みの線を付けて 印されている。後ろ脚では 馬脛骨と蹴爪(けづめ)毛の生えている球節との分かれ目のところに 浅く平行に 数本の線が彫り込まれている。膝は 角度の鋭い窪みとして 印されている。3 本か 4 本の平行した線の間に挟まれた ジグザグの彫り込み模様が 首の根っこのところに見られるが、これは恐らく 首輪を表わしたものであろう。

○ この小像は 奉納の献物であった。力強くて明快なジオメトリック期の形態は その後期に到って 或る種のマンネリズムに堕落して行っているが、その様式化が誇張されている上に 輪郭のシルエットも強調され過ぎている点に見受けられるように、この作品は このジオメトリック期の後期に作られたものである。従ってこのブロンズの像は、恐らく B.C. 8 世紀の半ばを過ぎた後の数年間に作られたものであろうと見られる。

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