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図版 004 グリフインの頭部像   NEXTnext-図版 005
   

図版 004 グリフインの頭部像

○ プロトメと呼ばれる 頭部と首だけの彫像の前の部分である。ブロンズで出来ている像で、像の高さは 27.8 cm.( 11.5 inch)である。ドイツの考古学研究所による発掘作業中に 1937 年から 1938 年に跨がる年の冬に、オリムピアで出土した。オリムピアの美術館に収蔵されている。(発掘物 収蔵品 No.B - 145)
○ 飾り物としてこのような動物のプロトメがくっ付けられていた ブロンズ製の大鍋は、ア-ケイック期には ギリシャの聖域に好んで良く奉納された献物の一つであった。色々なサイズのものがあって、小さいものもあれば 91 cm.を超える直径を持つ 非常に大きいものもあった。古い年代には獅子のプロトメと並んで グリフインのプロトメも良く見られるものであった。オリエント Orient(訳注 01)の原型から 仮令何等かの示唆があったとしても、これらのグリフインは兎も角 B.C.8 世紀のギリシャ人の手で創り出されたものである。当初はブロンズの伸板で作られていたが、B.C.7 世紀の初期以降になると 一塊まりの無垢の小さいグリフインのプロトメ許りでなく、2 つの部分に分かれていて 模様を打ち出したブロンズの伸板で作られた首に 無垢の頭部がしっかりとくっ付けられた 大きいプロトメまで見られるようになった。
○ 図版に示されたグリフインの頭部像は、今日まで残存しているものの中では最大のものの一つである。無垢の鋳物で作られている。くっ付けられている首の部分は ブロンズの伸板で出来ていて、出土した時には ひどく傷んだ状態であった。鱗の彫り込みで表面が覆われ、渦巻き模様の打ち出しが 両側面にずらっと並んでいる。この像が大鍋に取り付けられていた半田付けの痕が その付け根の所に見られる。この大鍋の高さは 49 cm.( 18.5 inch)であり 従って全体のプロトメの寸法は 80 cm.( 31 inch)あったことになる。グリフインの前頭部から 直立の支柱が突き出していて、円形になった把手を支えている。オリエントの原型にあった一塊まりの直立した頭髪を表わしたものから この突出部が取り入れられたものであって、ギリシャ人の作者が このような茸(きのこ)の形をしたものに変形してしまったものである。何か色の付いた材質のものが 眼窩に象嵌されていたが、今は残っていない。左の耳は亡くなっている。
○ B.C.7 世紀の中頃に作られたものではあっても、その形態の面では この頭部像は尚未だ ジオメトリック期の仕来たりに近いものである。縁が鋭く切れ込んだ嘴(くちばし)が 激しい勢いで前方に屈曲しており、大きく開いた両顎の間にあって上方に捩じれた舌の曲線が これを更に補足して 強調する形になっている。不滅の偉大さを新たに探し求める才能を持った この作者は、昔からの元々の姿かたちを この作品の中で 悪魔のように大変に恐ろしい創造物に変形させてしまったのである。
○ これらの作品に加えて、寸法とスタイルの類似したグリフインのプロトメが もう2 つ今日でも現存している。どちらもオリムピアの発掘作業の初期の段階で出土したもので、恐らくは同一の大鍋にくっ付けられていたものと思われる。その 1 つはアテネの国立美術館に収蔵されており、もう 1 つの方は ニュ-ヨ-クのベイカ- Walter C.Baker のコレクションの中に含まれている。

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