図版 006 女性の立像 | next-図版 007 |
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○ 灰色の石灰石で出来ている。像の丈は、10 cm.( 4 inch)の高さの四角い土台を含めて 65 cm.( 24.5 inch)である。パリのル-ブル美術館に収蔵されている。(収蔵品 No.3098)。嘗てはオ-セ-ルの美術館に収蔵されていたものである。
○ この女性像は、両足を揃えたままで 直立している。身体の側面に 左腕を垂れ下げ、左手の掌を拡げて 腰にぴたっとくつ付けている。右腕を曲げ、右手は指を伸ばして 胸の前に持って来ていて、祈祷者がすると思われるような仕草をしている。ベルトの付いた丈長の外衣が垂れ下がって、足元にまで達している。腰から下の下半身は、分厚くてねばっこい布地で隠されてはいるけれども、その布地のために 腰と胸の曲線が 反って強調されている。ベルトの中央から下方に向かってと 外衣の下の縁沿いとには 幅の広い飾り縁が付いていて、その装飾は 四角形と矩形との彫り込みのパタ-ンになっている。鱗様の型が 胴部に付いていて、幅の狭い首バンドのところで終わっている。略々四角形に近い肩の周りには 短い外套を纏っている。両手首には 腕輪を着けている。顔の上では 額のてっぺん沿いに、真っ直ぐに一列になって 頭髪がカ-ル状に配列されており、ベルのような曲線を描いて その尖った顔をぐるっと回って 両肩に垂れ下がり、分厚い編み髪になって 背中許りか 前面にも沿って下がっていて、水平の溝で分けられて 巻き毛になっている。この女性の眼差しは生き生きとしており、その唇は薄くて 窄(つぼ)められている。
○ この小像が出土した場所は 判っていない。しっかりとしていて コンパクトなその形から見れば、B.C.650 年頃の 所謂ダイダリック期のスタイルの中期に属する クレタ島出身の彫刻家の手になる作品であろうと推測される。付属する持ち物のないことから見れば、この像は 何れかの特定の神を表わしたものではなくて、奉納された献物であったであろうことは 明らかである。