図版 007 女性の立像か座像の 上半身像 | next-図版 008 |
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○ ミュケナイの砦の上にあったアテ-ナ女神の神殿の近くで 1897 年に出土した浮き彫りの断片である。石灰石で出来ていて、浮き彫り像の高さは 40.2 cm.( 16 inch)である。アテネの国立美術館に収蔵されている。(収蔵品 No.2869)。
○ 恐らくこの断片は ドリア式神殿のメト-ペ(小間壁)にあったものの一部分であろうと見られ、着衣の女性像で その右側面がベ-ルで覆われている。はっきりと示されている六角形の輪郭の中に 頭部が収まった構成となっている。顎の下の線が真っ直ぐで 力感溢れる唇が口に付いており、一際(きわ)目立つ両眉の下には ア-モンド形の両眼があり、真っ直ぐになって平行した 2 本の列を作って 巻き毛が額の下半分に覆い被さっていて、何れも 横の線が強調されている。分厚い頭髪は 全体として捉らえられており、大きい弧を描いて 頭部を覆ってカ-ブし、B.C.7 世紀の特徴であった所謂<テイアド・ウイッグ tiered wig>(段になった髪飾り)の調髪様式となって、顔の両側に垂れ下がっている。その形態には 幾分重厚さが見受けられるにもかかわらず、その顔は 唇が豊かで 鼻孔は拡がっており、表情には抜け目がなくて 若さに満ち 生き生きとしている。
○ 石灰石で出来た 同じ年代の他の浮き彫りの断片であって、ミュケナイのこの砦から 同時に一緒に出土し、疑う方もなく 嘗ては同じ建造物にくっ付いていたに違いないと思われるものがあるが、そうした断片と並んで この図版の断片も亦、ギリシャ本国の芸術品の中では 最古の碑石の浮き彫りの一つである。現在ル-ブル美術館に収蔵されているクレタ島の小像(図版 006)よりも後の年代になって作られたこの頭部像は、ダイダリック期のスタイルの後期の段階の特色を具えている。この浮き彫りは、ペロポネソス半島出身の彫刻家の手で B.C.630 年頃に彫られたものであるに相違ない。