訳 注

 P42(-p64)
訳注
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(本文訳註 055) クソアノン xoanon
原始的木彫り神像で、特にその原石や原木が容易に判るような 粗雑な像を言い、天から降ったと信じられた。クソアナ xoana はその複数形である。

(本文訳註 056) クレタ島 Crete
エ-ゲ海南端に位する地中海第 2 の大島で、古くから地中海貿易の重要な中継地点であった。面積は約 8250 平方 km.、人口 50 万人弱で 住民は大部分がギリシャ人である。肥沃な平野があり、果樹栽培・牧畜が盛んである。古代にはクレタ文明の中心として繁栄した。後アカイア人 Achaea、次いでドリス人が支配し、B.C.69 - 67 年にはロ-マが征服して 一属州とされた。B.C.3000 - 2000 年紀後半にかけて独特のクレタ美術(ミノス美術)を発展させ、エ-ゲ海及びその周辺の先史美術の中心地となった。この美術の特色は陶器、宝石・貴金属などの小工芸品、大規模な宮殿建築と壁画にある。中期ミノア時代には 東部地中海にクレタの海上権が確立し、真の青銅文明期に入り、島の中部のクノソス Cnossos など各地に壮大豪華な初期宮殿が建てられた。後期ミノア時代には クノソス王の島内統一で 伝説上のミノス王 Minos の海上王国が成立し、クレタ文明の最盛期となった。B.C. 1500 年頃ミュケナイ人がクノソスの支配者となったが、文明は変わらず、 B.C.1400 年には 大地震もあって宮殿文化は次第に衰えた。

(本文訳註 057) ダエダロス Daedalus

アテネ人で、比肩する者のない名建築家である。姉の子のタロス Talos を弟子としたが、鋸と轆轤(ろくろ)を発明したため 自分を凌駕するのを恐れて殺し、有罪の判決を受けて、クレタのミノス王の許に遁がれ、王のために迷宮を作った。テセウスに恋したアリアドネ Ariadne に ミノタウロス Minotaur の迷宮中で 糸で道に迷わぬ工夫を教えたため、怒ったミノス王に 息子のイカロス Icarus と共に 自分の作った迷宮内に幽閉されたが、臘付けの翼を作って脱出し、シシリ-島の王コカロス Kokalos の許に遁がれた。イカロスは高く飛び過ぎて 翼の膠(にかわ)が太陽の熱で融け、海中に墜ちて死んだ。追跡して来たミノス王は コカロスの娘たちに殺されたとされる。神像・鋸・斧・膠・船のマストなどの発明者とされている。

(本文訳注 058) ペロポネソス半島 Peloponnesus ( page 27 図 01 参照 )
ギリシャ本土南部の半島で、中世にはモレア the Morea と呼ばれた。幅 7 - 8 km.のコリント地峡で本土と繋がり、東西 南北の長さは何れも 230 km.、面積は 21,800 平方 km.である。アルゴリス、アルカデイア Arkadia、ア-カエア、エリス、コリンテイア、ラコニア Laconia、メッセニアの 6 県から成り、人口は約 120 万人である。地形は山勝ちで 雨量は少なく、葡萄・オリ-ブ・たばこを産す。羊・山羊を飼育し、海岸の漁業も行われる。B.C. 13 世紀頃からイオニア人が植民し、初期ミュケナイ文明の中心地であった。後ドリス人が占領し、B.C.8 - 5 世紀にかけて 有力な都市国家のアルゴス、スパルタなどが栄えた。

(本文訳注 059) イオニア地方 Ionia  ( page 27 図 01 参照 )
エ-ゲ海に臨む 小アジア西岸地方及び隣接諸島一帯の古称である。B.C. 10 世紀頃からギリシャ人の一派 イオニア人が植民して 都市を建設し、商業が栄え、東方文明の影響を受けて B.C.800 年頃からイオニア哲学を始め 天文・文学・歴史・美術が栄えた。B.C.6 世紀にペルシャに支配され、B.C.500 年頃に起こした<イオニアの反乱>は失敗したが、ペルシャ戦争の原因となり、解放されて アテネのデロス同盟 Delian Confederacy の支配下に入った。その後ペルシャ・マケドニア・ペルガモン・ロ-マに次々に属し、中世はビザンチン帝国 Byzantine 領で、現在はトルコ領である。古代ギリシャ世界の生命線で、ギリシャ文化の形成に貢献した。

(本文訳注 060) キクラデス群島 Cyclades ( page 27 図 01 参照 )
エ-ゲ海南部のギリシャ領の群島で、大小 211 の島から成り、総面積は 2650 平方 km.、人口は 15 万人弱で、主都はシュロス島 Syros のエルムポリス Ermoupolis で、その最大の島はナクソス島である。元々は古代ギリシャの宗教の一中心のデロス島を囲む島々の意で、B.C. 1000 年頃に ギリシャ人が先住民を破って定住したものである。

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