(本文訳注 127) アテ-ナ・パルテノス本尊 Athena Parthenos 金と象牙を素材として作られた アテ-ナ女神の立像で、パルテノン神殿の本尊であり B.C.438 年に奉納された。フイデイアスの傑作であるが 原作は失われ、ロ-マ年代の小型の大理石摸刻と、首を比較的忠実に摸写した 宝石のように秀れた逸品の彫石だけしか 残っていない。華麗な衣服を纏った女神の右手の上には 勝利の女神ニケの小像があり、頭上には スフインクスが、胸の上には 象牙製のメドウサの首が飾られてあったと言う。フイデイアスは この像の制作のためにあてがわれた素材を着服したとして、又 自分自身とペルクレスの似姿を女神の盾に刻み込んで 女神の尊厳を傷付けたとして告訴され、投獄されたとされる。
(本文訳注 128) ヘルメス神 Hermes ギリシャのオリムポス山の 12 神の一人で、ゼウス神の末子として アルカデイア地方のキュレネ山 Kyllene 中の洞穴で生まれた。母は アトラス Atlas の長女のマイア Maia である。語源は<石塚>の意であり、先住民族の神で ピュロス Pylos 文書にも既に登場しており、その崇拝はアルカデイア地方から ギリシャ全土に拡がったらしい。ゼウス神はその才を愛して 自分自身と地下の神々との使者に任じ、死霊を冥界に導く役目もした。富と幸運の神として 商売・盗み・賭博・競技の保護者であり、竪琴・笛の他 数・天文・音楽・度量衡の発明者で、道と旅人(商人)・牧者の保護神ともされた。若々しい力に溢れた美青年で、神々の伝令者の役割りを勤め 鋭い巧知と巧みな説得術で知られる。鍔の広い旅行帽のペタソス petasos を被り 伝令杖ケリュケイオン kerykeion を持ち 足に有翼のサンダルを履いた姿で表わされている。
(本文訳注 129) アマゾン族 Amazon 軍神アレスとニムフのハルモニア Harmonia とを祖とする ギリシャ神話中の勇猛で好戦的な女人族で、小アジア北辺の古代コ-カサス Caucasus 山や黒海沿岸に棲んだ。王国は 北方の未知の地と考えられていたが、そのアマゾンの町として最も名高いのは ポントス Pontos(黒海南岸地方)のテミスキュラ Themiskyra である。女のみより成り 他国の男と交わって子を生むが 男子は殺すか不具とし、女のみ育てた。アマゾンは<乳なし>の意で、弓を引き易くするため右乳房を切り取っていたことから呼ばれたと言う。特に弓術に秀れ、半月形の盾と共に有名である。槍・斧も用い、騎士で 常に戦闘と狩猟とに従事していた。守護神はアルテミス女神であった。テセウスはアマゾン族を討ち、女王アンテイオペ Antiope を妻とした。妹のオレイテユイア Oreithyiaはその復讐にアッテイカ地方に来襲したが、激しい戦闘の後撃退された。
(本文訳注 130) ケラ cella ラテン語で<小室>の意で、ギリシャ語ではナオス naos と言う。ギリシャ・ロ-マの神殿で 周囲の柱列廊部分から壁で区画されている神殿の本体を指す用語で、屡々内陣 即ち神像を安置する神殿の主室を指し、大規模の場合には 内部に列柱が立てられる。ケラを囲う壁には窓は無く 光りは出入り口からのみ採られる。厳密にはナオスの他 プロナオス pronaos(前房)とオピストドモス opisthodomos(後房)をも含む。 (本文訳注 131) ドリア式 doric ギリシャ美術の一様式で イオニア式が優美・女性的であるのに対して簡素・豪壮・男性的である。神殿建築では やや先細りの 20 溝の円柱が直接床面に立って、柱基を欠いている。柱頭は 平鉢形のエキナス echinus と その上に載る方形の石板アバクス abacus(頂柱板)から成り、軒下のフリ-ズ部には 方形のメト-ペと三条竪筋溝の束石トリグリュフ triglyph とが交互に並んでいるのが特徴である。B.C.7 世紀以降主としてギリシャ本土及び南イタリ-のギリシャ植民地で造営され、その重厚な外見とフリ-ズ部分の装飾法は ドリス人の造型感覚を反映しているとされる。彫刻にもドリア式とイオニア式があり、筋骨の表現に硬軟の別があるが、差別し難い作品も多い。
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