(本文訳注 132) ヘリオス神 Helios 太陽神で ロ-マ神話のソ-ル神 Sol に当たる。神話中では テイタン神族のヒュペリオン Hyperion とテイア Theia との子で、暁の女神エオス Eos、月の女神セレネの兄妹である。壮年の美男子で 四頭の駿馬に曳かれた戦車に駕し、毎朝東より昇って 天空を快速で横切り、西方オケアノス Okeanos の流れに到り 黄金の宮に入る。神としては オリムポス山の神々の下に位置付けられる。元来は天体としての太陽の擬人化で、その崇拝は ギリシャではロドス島以外には殆どなかった。
(本文訳注 133) セレネ女神 Selene 月の女神で ヒュペリオンとテイアとの娘とされる。ゼウス神と交わって一女パンデイア Pandia を生んだ。美しい羊飼いの若者エンデユミオン Endymion に恋し、ゼウス神に頼んで不老不死の永遠の眠りを授け 夜な夜な天上より降って 眠れる恋人と夜を共にした。アルテミス女神(ロ-マではダイアナ女神)或いはヘカテ女神と同一視され、動植物の繁栄と性生活に大きい影響を持ち、魔法とも常に関係付けられた。
(本文訳注 134) ポセイドン神 Poseidon クロノス神とレア女神との子で ゼウス神の兄とも弟とも言われ、オリムポス山 12 神の一である。他の兄弟と共に 父に呑み込まれた後吐き出され、兄弟と共に父から世界の支配権を奪って 籤で海の支配権を得た。水と海だけでなく あらゆる泉の支配者で、大地の神、地震の神であり、馬を創り出し 馬を馭す術を人間に教え 競馬の守護神であった。宮殿はエウボイア島のアイガイ沖の海底にあり、青銅の蹄に黄金の鬣の馬を飼い、戦車に駕し ネレウス Nereus とその娘たち、オケアノスとその娘たち、后のアムピトリテ Amphitrite と二人の間の子トリトンなどを従え、三叉の鉾を手に海を馳せれば 荒波も直ちに鎮まったとされる。トロイ戦争では 常にギリシャ軍の味方であった。執拗に支配権を地上にまで拡げようとして、ギリシャ諸都市の主神の位置を多くの神々と争ったが、すべて敗れた。ロ-マではネプトウヌス Neptunus と同一視された。 (本文訳注 135) ペロポネソス戦争 Peloponnesian War デロス同盟のアテネとペロポネソス半島同盟のスパルタとが ギリシャ世界での覇権を争い、各々同盟都市を率いて戦った戦争(B.C.431 - 404 年)で、民主主義と貴族主義との戦いの性格を持った。商業都市のコリントが アテネの圧迫を受けたことが発端で、スパルタは陸軍 アテネは海軍主体で戦ったが、B.C.430 年よりアテネに疫病が流行し ペルクレスがこの病で死亡したことが因となって、アテネは敗れた。B.C.421 年には 一度ニキアス Nicias の和約が成立したが、アテネの反スパルタ的活動がその後も続き、B.C.415 - 413 年には アルキビアデス Alcibiades の提案したシシリ-島遠征の大失敗で アテネは全海軍を失った。スパルタとの戦いはその後も繰り返され 勝ったり敗けたりであったが、B.C.405 年に アイゴスポタモイ Aigospotamoi の海戦でアテネが敗れ、デロス同盟も解散して ギリシャは衰退に向かった。
(本文訳注 136) ニケ女神 Nike <勝利>の意で、その擬人化された女神である。ロ-マのヴィクトリア Victoria に相当する。テイタン神族のパラス Pallas とステユクス Styx との長姉であり、ゼロス Zelos(競争心)、クラトス Kratos(支配)、ビア Bia(暴力)は その妹である。オリムポス山の神々を援けて テイタン神族と戦い、ゼウス神に賞せられた。又競技の勝利の女神でもあり、ペルシャ戦争の勝利が その人気を急激に増大させた。軍の女神として アテ-ナ女神に従って良く表わされ、造形美術では普通 片手に花輪 片手に棕櫚の枝又は月桂樹の冠を持った 着衣・有翼の若い女性の姿で表現される。ギリシャ各地に神殿を持っていた。
(本文訳注 137) ニケ女神 Nike の神殿 アテネのアクロポリスの丘の西南隅の ニケ・ピュルゴス Nike Pyrgos の高台に建てられた イオニア式の小神殿である。<勝利を齎らすアテ-ナ>の意のアテ-ナ・ニケ女神に捧げられたもので、B.C.448 年頃のカリクラテス Callicrates の設計に基づいて B.C.401 年頃に建造された。東西の両正面に 大理石一本造りのイオニア式円柱 4 本づつを配した アムピプロステユロス amphiprostylus(両面前柱式)タイプであって 床面は 5.4 m. x 8.3 m.である。
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