(本文訳注 169) イオニア式 ionic ギリシャ美術の一様式で イオニア地方に興り、優美で女性的・情緒的な傾向を持ち、剛健なドリア式と対比される。建築様式としては総じて細身で、随所に植物文装飾が加わっている。円柱の溝は 24 で 水平の刻み模様入りの柱基の上に立ち、柱頭はエキヌス echinus 部に 両端に渦を巻いた枕形の石材が載り、軒下は小アジアでは 3 段の水平石材を積み上げたア-キトレイブ architrave から成り、ギリシャ本土やキクラデス群島では その上に 区切りの付いていないフリ-ズが加わることが多い。平面図では 柱間と奥行きを拡げて 正面性を強調している。B.C.6 世紀以降 主に小アジアとエ-ゲ海諸島とのイオニア圏及びアッテイカ地方で 多く造営された。
(本文訳注 170) キュベレ女神 Cybele プリュギア Phrygia で崇拝された大地女神である。本来は豊穣多産の女神で、最高神として予言・疾病治癒・戦中の保護・山森の野獣保護など 凡ゆる力を持つと考えられた。ギリシャ・ロ-マの世界では神々の母として レア女神と同一視された。B.C.5 世紀後半には その崇拝がアッテイカ地方に齎らされ、B.C.204 年ポエニ Poeni 戦争の最中にロ-マに将来された。神話ではウラノス神とガイア女神の娘とされ、塔を頂き、時に多くの乳房を持ち、2 頭の獅子を従え 又はその曳く戦車に載る姿で表わされる。 (本文訳注 171) アッテイス Attis プリュギアの大地女神キュベレの愛した少年である。本来男女両性のアグデイステス Agdistis が神々に去勢されて女神となり、切断された男根から生えた巴旦杏(はだんきょう)の実が サンガリオス Sangarios 河神の娘ナナ Nana を懐妊させて、アッテイスが生まれた。他の女と結婚しようとして キュベレ女神に狂わせられ、自ら去勢して死んだとされる。彼の恋したのはニムフのサガリテイス Sagaritis で、女神がこのニムフの宿っている木を切り倒して 彼を狂わせたともされ、植物の枯死と復活を表象した神として ロ-マ年代にはその崇拝が広まっている。
(本文訳注 171 - 2) バルベリ-ニ宮殿 Palazzo Barberini ロ-マにあるバロック宮殿で、教養人として知られる教皇ウルバヌス八世 UrbanusⅧの命により 1628 年にマデルノ C. Maderno が着工し、 1633 年頃にベルニ-ニとボロミ-ニ F. Borromini との手で完成された。3 層の主館は 1 階前面に 7 個のア-ケ-ドの開放廊を付け、各階を古典的な付け柱で分節した 温雅な建物である。内部の大広間を飾る コルト-ナ Pietro da Cortona の大天井画( 1633 - 39 年 )は名高い。 (本文訳注 172) サテユル Satyr ギリシャ神話で 快楽を好んで野獣的に行動し 山羊の特徴を持った半人半獣の 山野の精である。シレノス Silenos との区別が曖昧で、屡々混同される。B.C.4 世紀以後は シレノスは老人で 馬の特徴を持ち、サテユルは若くて 山羊の特徴を持った。併し サテユルも馬の長い尾に似たものを持ち 巨大な男根を具え、深毛の野蛮な男として表わされている。山羊の特徴の一部を持つのは パ-ン神との関係に由来する。年代が下がると 美術ではだんだん普通の人間らしく表現されている。デイオニソス神の騒々しくて好色な従者とされ、酒を好んで 屡々好色な振る舞いに及び、ニムフやマイナス Mainas たちと戯れ 踊り抜く。ロ-マ人は彼らを フアウヌス Faunus と同一視し、山羊の蹄と角を有する姿を想像した。
(本文訳注 173) アンテイオコス三世 Antiochus Ⅲ B.C.241 - 187 年。ヘレニズム期のシリア王で、在位 B.C. 223 - 187 年である。衰退期の王国の回復を目指し 印度、アラビアに遠征して 大王の名を得、嘗て失敗したプトレマイオス朝領のシリア・パレステイナ Palestine の攻撃に成功した。トラキア地方に侵入してロ-マと衝突し、ギリシャに進撃して テルモピュライ Thermopylai 及びマグネシア Magnesia の戦いに敗れ、B.C.188 年には小アジアを失った。
(本文訳注 174) サモトラケ島 Samothrace ( page 27 図 01 参照 ) エ-ゲ海北東部にあるギリシャの島で、面積 195 平方 km.人口凡そ 4000 人である。東西に長い島で 主都はサモトラケ。オリ-ブ・蜂蜜を産し、海岸では海綿がとれる。エジプトに対するギリシャの戦勝を記念したニケ女神像の出土地として有名である。プリュギアの豊穣神カベイロスたち Kabeiros の秘儀祭が行われ、その崇拝の中心であった。神話では ゼウス神の子のダルダノス Dardanos とイアシオス Iasios の兄弟がこの島に棲んだとされる。
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